不動産でも経費算出方法として減価償却という計算で毎年損益通算が可能です。今回は減価償却について詳しく説明していきます。
1、減価償却とは?(定額法)
2、RCの減価償却(躯体=建物)算出方法について
3、建物設備(15年)の減価償却について
4、什器備品の減価償却について
5、減価償却のまとめ(色々な減価償却について 車、パソコン、木造住宅など)
1、減価償却とは?(定額法)
中古マンションを取得した場合には、残りの耐用年数と減価償却率を求める必要があります。
①減価償却
とは、「物の価値の減少を表す手続き」の事です。その減価償却の対象になる‘‘物‘‘、とは建物や機械、車など、ある程度長い期間使用するものです。(まとめて「固定資産税」)と呼びます。
減価償却の考え方としては、資産は長期に渡って使われるものであり、その価値は年を追うごとに減っていき価値がなくなるという考え方です。不動産と減価償却は非常に密接な関係にあり、・不動産を所有している人・これから不動産を購入する人は理解しておくべきです。なぜなら、減価償却は個人名義で不動産を取得した際、必ず発生するものであり、減価償却費の額によって賃貸経営や不動産取引で生じる利益額が左右されるからです。
減価償却費の計算が必要な時
・「賃貸収入がある場合」
・「不動産売却をする場合」
・「賃貸収入がある場合」アパート、マンション経営で得た賃貸料などの収入は、不動産所得として確定申告をしなければなりません。このような場合は不動産の取得用の経費として取得費用(購入金額)を一定年数に分け、毎年の経費として計上することができます。
・「不動産売却をする場合」所有する不動産を売却して得た利益を「譲渡所得」といいますが、これには所得税や住民税がかかります。譲渡所得は売却で得た金額そのものでなく、その不動産を売却するまでにかかった費用を売れた価格から差し引いたものとなります。
そして、減価償却費の計算方法には、「定額法」と「定率法」の2種類があり、不動産の場合は定額法を採用することと決められています。
②定額法
計算式
定額法は、耐用年数の期間、毎年同じ額を均等に割ったものです。
「建物の購入価格×償却率=マンションの減価償却費」
償却率の計算式は「建物価格÷耐用年数=償却率」
耐用年数
法定耐用年数はRC(鉄筋コンクリート)構造47年、木造20年と定められており、マンションの場合は鉄筋コンクリート造のものがほとんどなので、新築時の耐用年数は、47年のものが多いと考えても大丈夫だと思います。
・中古マンションの耐用年数の求め方
「(新築時の耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2=取得時の耐用年数」
建物価格とは、土地代、消費税、建物代の合計の販売価格ではなく、建物のみの価格です。
不動産の減価償却の計算では、土地と建物を分けることが大切です。なぜなら、減価償却の対象になる物は、時間が経てば経つほど価値を失っていくものが対象になっているのに対して土地は、時を経ても価値が変動しないため減価償却の対象になりません。
①耐用年数の求め方
・法定耐用年数の一部を経過した資産
法定耐用年数ー経過年数+経過年数×20%=耐用年数
例 築10年の場合
・47-10+10×20%=39
築10年の耐用年数は39年となる。
・法定耐用年数の全期間が既に経過した資産
法定耐用年数×20%=耐用年数
例 築52年
・47×20%=9.4
②土地価格、建物価格を出す方法
税抜きの建物価格ー物件価格=土地価格
販売価格-土地価格=建物価格
建物価格÷販売価格で建物割合
土地価格÷販売価格で土地割合
例 税抜き建物価格2500万円 物件価格 1750万円
・2500万円ー1750万円=750万円
土地価格は750万円
③年間の減価償却率の求め方
建物金額÷耐用年数=減価償却費
償却率=1÷耐用年数 (1=建物価格)
例 2000万円 築10年
・47-10+10×20%=39
2000÷39=51
年間の減価償却費は51万円
減価償却により、さらに節税効果を高めるために、建物の一部を「建物付属設備」に分けて減価償却を行うことができます。建物の耐用年数は構造によりますが、木造22年、鉄骨造34年、RC造47年と定められていますが、それに比べて設備の耐用年数15年と定められており、短い期間で償却することができます。
そして築年数が15年を超えた物件を購入した場合建物設備は3年で償却が可能となりますので、単年の節税効果はとても大きくなります。
①建物設備として定められているもの
・照明等に係る電気設備
・給排水設備
・ガス設備
・冷暖房、通風又はボイラー等の空調設備
・エレベーターなどの昇降機設備
・消化、排煙設備、火災報知器、格納式避難設備
・改装工事等の内装工事費用
②例 築20年 RC造、建物価格1000万円 建物設備価格250万円
・建物と建物設備を分けない場合
(47年-20年)+20年×20%=31年
残りの減価償却期間は、31年となります。
1000万円÷31年=32万2580円
建物と建物設備を分けない場合の年間の減価償却費は32万2580円となります。
・建物と建物設備を分けた場合
建物 750万円÷31年=24万1935円
設備 250万円÷3=83万3333円
建物+設備の合計 107万5268円
分けると107万円、分けないと32万円になり、それが3年目まで続くので、当初3年間の減価償却費が多くなります。ただし、4年目からは建物のみの償却になり、単年の減価償却費は減ることになります。トータルの減価償却費は同じになりますので、この部分の認識にはご注意ください。建物と建物設備を分けて、減価償却費を短期的に大きくとることで、より高い節税効果を得ることができますが、建物と建物設備を分ける方が良いかは物件や状況により、変わります。
「什器」とは、日常で使用する器具や器物、物をしまったりする家具、「備品」は備え付けてある物の事を指します。什器備品というととても広い範囲の物が該当します。勘定項目上では10万円を基準に消耗品か固定資産かに分けます。什器備品はこの固定資産の枠に入ります。使用可能期間が1年以上かつ取得価格が10万円以上のものについては資産計上し、それぞれの耐用年数に応じて減価償却を行うことが定められています。場合によっては「一定償却資産」「少額減価償却期間の特例」の会計処理も認められています。
什器備品の法定耐用年数については下記のサイトで確認できます。
http://tool.yurikago.net/601/yurikago/
減価償却費は 購入価格÷法定耐用年数=什器備品の減価償却費 で求める事ができます。
例 25万円のソファを購入した時 接客用ソファの法定耐用年数は5年
25万円÷5=5 年間の減価償却費は5万円になります。
①一括償却資産とは
10万円以上20万円未満の減価償却資産には、「一括償却資産」として経費計上する会計処理が適用されます。耐用年数に関係なく3年間にわたり均等な金額で経費計上できるため、減価償却よりも計算を簡単にできるメリットがあります。
②少額減価償却期間の特例とは
取得金額が10万円以上30万円未満の減価償却資産の場合、全額を損金として処理する「少額減価償却資産の特例」を受けることができます。特例が適用されるのは、青色申告法人である中小企業あるいは農業組合で、従業員数1000人以下の規模に該当する法人です。なおかつ、複数の資産が少額減価償却資産の適用を受ける場合、事業年度ごとに300万円の上限が定められています。確定申告時などの際は、少額減価償却資産の取得に関する明細書の添付が求められます。
①減価償却ができる資産
建物や自動車、パソコンなど、10万円以上の有形固定資産が対象になります。
固定資産には、建物や自動車といった形のある有形固定資産のほかに、特許権、意匠権、商標権、実用新案権、ソフトウェア、漁業権といった形のない資産もあり、これを「無形固定資産」といい、無形固定資産も減価償却の対象になります。
②減価償却ができない資産
有形固定資産でも、減価償却の対象にならないものがあります。
土地、美術品、骨董品などは、時間が経って価値が減少するものではありません。
そのため、使用することによって価値が減少していく減価償却資産に該当しないのです。
減価償却は資産運用をするうえで非常に重要です。
減価償却費をできるだけ多く計上することで利益を帳簿上抑えることができるからです。利益を抑えて計上することで、所得税などの節税対策にも期待できます。