手付とは売買や賃貸の際に買主や借主が交付するお金ですが、売買や賃貸とは別個の独立した契約です。手付金とは契約締結日以後物件の引渡し前に代金充当の目的で支払われるもので、その名目は内金でも解約保証金でも良くて手付という名前でなくても構いません。契約後買主や借主の気が変わって解約すると取引相手に迷惑がかかるので、予め一定金額を渡して気軽に解約できないように抑止効果を期待することができます。そのほか、たとえ解約しても相手に損害を賠償する意味で手付を放棄させることができるという効果もあります。このような手付の機能を民法557条1項で既定された解約手付と言います。手付を払えば自動的に解約手付とみなされます。
手付けには証約手付け・解約手付け・違約手付けの3種類があります。手付といえばまず解約手付のことを指しますが、証約手付についても同様で、手付を打てば契約締結の証拠になるという意味の証約手付としての機能を持ちます。解約手付については先述したとおりで、契約後気が変わって解除する場合に相手の債務不履行は必要なく、手付交付者の勝手な事情で解約できます。その代わり予め払った手付は返ってきません。
逆に手付を受け取った売主や貸主から解除したい場合には、手付の倍額を払って解除することができると定められています。ただし契約後引渡し前ならいつでも解約できるわけではなく、相手が履行に着手したら解約できないとされています。すなわち相手に引き渡すうえで欠くことのできない前提行為をしたら、相手はもう解除ができないということです。手付の3つ目の違約手付については、単なる手付の交付では足りず違約手付であることを明言しておくことが必要です。
違約手付は相手が債務不履行に陥った際の違約罰としての意味を持ちます。民事制裁として手付を没収して更に損害賠償もできるというものです。また違約手付は損害賠償の予定という意味も持ちます。損害賠償の予定とは、予め損害が生じたときに備えて損害賠償の額を手付金額に限定することを決めておくという規定です。
宅建業者に関しては一定の手付けに関する制限があります。これは宅建業者が売主になる場合の制限で、素人の買主を保護するための規定です。宅建業者は代金の2割を超える手付を受領してはいけません。宅建業者が売主となる場合には受領する手付について保全措置を採ることが義務付けられています。保全すべき額は既に受領した手付と併せて受領予定の全額です。保全の方法は銀行による連帯保証・保険事業者による保証保険・指定保管機関による保管の3種類があります。こうした保全措置を行わない宅建業者は手付金を受け取ることができません。